書店で見かけた時、著者の名前を見て、「理系のための研究生活ガイド」の人だと思って立ち読みしたら面白くて結局買ってしまった。「研究生活ガイド」は今回の本の10年前に出た本で、留学したいときは言い回ると実現するなど。大学1年の時に読んで印象に残っていた。今回の本は10年の進化が見られてとても面白かった。
著者の坪田先生は「ドライアイ」の専門家で、医学・理工学に携わる人の立場で人生設計について述べている。この本では人生の設計の仕方を「バリュー」「ミッション」「ストラテジー」3つの項目で表していてこれらの項目を自分なりに考えることによって、何が自分の原動力になっているのかを(再)認識することができた。
著者は人生は「仮説」であるとして、自分年表を作って10年後までのチャートを作ることも進めている。そのうえで、研究を続けて行くためにいかにして資産を増やすか、という理系が弱そうな分野についても積極的に語られていて新鮮だった。「子供を育てる為に研究をやめて企業で働く」例は、とても他人事のようには感じられなかった。大学に残って研究を続ける為にどのようにしてお金を増やしていくかについて著者の経験も含めて書かれている。
「自分の出身大学で教授になるには」という、理系研究者にはとても興味のある切実な問題に、審査内容なども含めてかなり突っ込んだ舞台裏までもが赤裸々に書かれている。こんなに書いちゃっていいの?という印象も受けた。
研究者が研究資金をゲットする方法として一般的なものが、日本学術振興会に科学研究費補助金を申請することなのだが、申請者としての心構えのみならず、審査する立場としても申請書の書き方について図入りで的確にアドバイスしていて、わかりやすい。また、自分が大学で研究を続けていくための資金獲得の方法として会社設営やNPO法人の設立方法までにも言及している。
研究業績は論文の数で決まるのが一般的なので、謙虚にならないでノーベル賞目指して行きましょう、というポジティブなエネルギーが伝わってきた。余談だけど、著者によるとノーベル賞は「ファッション性」なのだそうだ。
前作の「研究生活ガイド」もそうだったが、全体として筆者の経験談が赤裸々にかつ謙虚に、かつアグレッシブに書かれているのでとても身近に感じられた。これから研究者を目指す大学院生はもちろんのこと、大学の学部生、先生方にも是非読んでもらいたい本です。
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About Keiichi Yasu
音声・音響・聴覚情報処理に興味がある研究者。現在は吃音についての研究を行っている。Linuxを1998年より嗜む。
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